自分の美貌に気がついて

 呉羽之介は今更ながら、自分の美貌に気がついて、吐息と一緒に心の奥で呟《つぶ》やいたのであります。 ほんに呉羽之介自身にしても、これまでにこの絵姿のように美くしい男を見たこともなければ、これよりあでやかな婦女を巷《ちまた》に見たこともないのでした。女にしても見まほしい――此の形容の詞《ことば》はも...

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呉羽之介、美の永遠を祈請して悪魔を呼ぶ事

 と、片里は、呉羽之介をみつめていた目を画面へと移し、限りない讃美の声をあげるのでした。「なるほど、先程にくらべると、ほんの少し筆を入れただけで、また一しお見ちがえるまでになったなんという美くしさ、若々しさあでやかさ――まるでほんものの呉羽之介どのそっくりじゃ」「わしには一生に又と、これよりすぐ...

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片里どのの言葉ご用心なされ

「呉羽之介どの、片里どのの言葉ご用心なされ――学は古今に渡り、識百世を貫《つら》ぬく底の丈夫《ますらお》なれど何を拗《す》ねてか兎角《とかく》行《おこない》も乱れ勝ちな人ゆえ、この人の言うことなぞ信用はなりませぬぞ」「これはまた聖人どののお叱《しか》りか――」 片里は親しい友人の罵倒をかるく笑い...

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